インフルエンサーマーケティングの効果は、再生数だけでは判断できません。認知拡大、来店、購入など、施策の目的によって確認すべき数字は異なります。
重要なのは、投稿前にKPIを設定し、投稿後に同じ基準で結果を比較することです。
インフルエンサーPRの効果測定で重要な5つの指標
TikTokやInstagramのショート動画PRでは、投稿の再生数が成果として報告されることがあります。
しかし、10万回再生された動画と3万回再生された動画では、前者の方が費用対効果に優れているとは限りません。
たとえば、店舗への来店が目的なら、動画を見た人が店舗の近くに住んでいるか、予約につながる行動を取ったかも重要です。
まずは、目的別に確認したい5つの指標を整理します。
| 指標 | 意味 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 再生数 | 動画が再生された回数 | 認知拡大 |
| リーチ | 投稿に接触したアカウント等の数 | 認知拡大 |
| エンゲージメント | いいね・保存・コメント・シェアなど | 興味喚起 |
| サイト流入・CV | サイトへの訪問や購入・予約などの成果 | 行動促進 |
| CPA・ROAS | 成果1件あたりの費用、広告費用対効果 | 収益性の評価 |
※指標の定義や取得できるデータはSNSごとに異なります。再生数とリーチは同じ数字ではありません。
再生数とリーチの違い
再生数は動画の再生回数を示す指標です。同じ人による複数回の再生が含まれる場合があります。
一方、リーチは投稿に接触したアカウント数などを把握するための指標です。
たとえば、再生数が10万回でも、10万人が動画を見たとは限りません。
認知拡大を目的とする場合は、再生数とリーチを区別して確認します。
また、保存数やコメント数が多い動画でも、それだけで購入意欲が高いと判断することはできません。
コメントの内容、視聴者の属性、商品との関係を含めて評価する必要があります。
費用対効果を計算する3つの方法
インフルエンサーPRの費用対効果を比較する際は、施策総額を基準に計算します。
クリエイターへの報酬だけでなく、企画・進行管理費、制作費、二次利用料など、評価対象の施策に必要な費用を含めることが重要です。費用の内訳についてはインフルエンサーマーケティングの費用相場と、見積もりの中身で解説しています。
① CPM:1,000回再生あたりの費用
動画の再生数を基準に費用を比較する場合、1,000回再生あたりの費用を計算できます。
計算式:
CPM相当額 = 施策費用 ÷ 再生数 × 1,000
たとえば、PR費用が20万円で、動画が5万回再生された場合です。
200,000円 ÷ 50,000回 × 1,000 = 4,000円
つまり、1,000回再生あたり4,000円です。
ただし、これは再生回数を分母にした独自の比較値です。広告管理画面で表示される、インプレッションを基準としたCPMとは区別してください。
また、再生数が多いほど売上につながるとは限りません。
② CPA:成果1件あたりの獲得費用
CPAは、購入や予約、問い合わせなどの成果を1件獲得するためにかかった費用です。
計算式:
CPA = 施策費用 ÷ 成果件数
たとえば、30万円の施策で、専用リンク経由の購入が20件確認できた場合です。
300,000円 ÷ 20件 = 15,000円
CPAは15,000円となります。
ただし、購入1件あたりの利益が5,000円の商品であれば、このCPAでは採算が合いません。
逆に、1件あたりの利益が高い商品や継続購入が期待できるサービスでは、許容できるCPAが変わります。
CPAの良し悪しは、商品の利益構造と比較して判断する必要があります。
③ ROAS:施策費用に対する売上
ROASは、広告に投じた費用に対して、どれだけの売上が発生したかを示す指標です。
計算式:
ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100
たとえば、施策費用30万円に対して、計測できた売上が60万円の場合です。
600,000円 ÷ 300,000円 × 100 = 200%
施策総額を分母にした場合は、厳密には広告費だけのROASではなく、PR施策全体の売上対費用比率として扱うと明確です。
また、ROAS相当値が200%でも、利益が出ているとは限りません。
売上から商品原価、配送費、手数料などを差し引く必要があるためです。
ここまでの金額はすべて計算方法を説明するための仮の数値であり、実際のPR施策の成果を示すものではありません。
TikTok・InstagramのPR効果を測定する具体的な手順
効果測定を行うには、投稿後に数字を集めるだけでなく、施策開始前の準備が重要です。
基本的な流れは次の5ステップです。
- 目的を決める:認知・予約・購入など、最優先の目的を一つ設定する
- KPIを決める:目的に合った指標と評価期間を定める
- 計測方法を準備する:専用URL、クーポンコード、管理画面データなどを用意する
- 投稿後の数値を記録する:公開7日後・30日後など同じ基準で集計する
- 次回の施策に反映する:クリエイター別・動画別の結果を比較する
目的の決め方や、依頼前に整理しておく項目はショート動画PRを依頼する前に決めておく3つのことにまとめています。
専用URLとUTMパラメータを活用する
自社サイトへの流入を測定する場合は、UTMパラメータ付きのURLを用意する方法があります。
UTMパラメータとは、アクセス元やキャンペーンを識別するためにURLに付ける情報です。
たとえば、TikTokのPR施策で以下のようなURLを使用します。
https://example.com/?utm_source=tiktok&utm_medium=influencer&utm_campaign=newproduct
Google Analytics 4(GA4)などで、設定したキャンペーンからのアクセスを確認できます。
さらにクリエイター別に比較したい場合は、utm_contentなどを使い分けます。
ただし、TikTokやInstagramでは、通常投稿のキャプションにURLを記載しても、直接クリックできるリンクとして機能しない場合があります。
実際に利用できるプロフィールリンク、ストーリーズのリンク機能、広告のリンク先など、投稿形式に合った導線を設計してください。
また、UTMパラメータを設定しても、すべての購入や来店を追跡できるわけではありません。
店舗PRでは専用クーポンも選択肢になる
飲食店や美容サロンなどでは、サイト上の予約だけでなく、電話予約や直接来店も発生します。
この場合、専用クーポンや予約時の申告を利用する方法があります。
たとえば「動画を見た方限定のクーポンコード」を発行し、利用件数を集計します。
ただし、コードが他の人に共有された場合や、動画を見てもコードを使わず来店した場合には、正確な効果測定が難しくなります。
専用コードによる集計は、施策による行動を把握するための一つの方法として利用します。
効果測定でよくある3つの失敗
1. 再生数だけで成功・失敗を決める
再生数が高い動画でも、商品との相性が低ければ購入や来店につながらないことがあります。
一方、再生数が少なくても、ターゲットとの一致度が高ければ、問い合わせにつながる場合があります。
認知目的なら再生数やリーチを重視し、獲得目的なら成果件数やCPAも確認します。
2. クリエイターごとに計測条件が違う
Aさんの投稿は公開7日後、Bさんの投稿は公開30日後の再生数で比較しても、同じ条件の比較にはなりません。
投稿形式や公開からの経過日数をそろえ、比較条件を明確にします。
また、費用比較では、クリエイター報酬だけを分母にするのか、管理費などを含む施策総額を使うのかを統一してください。
3. 売上の増加をすべてPRの成果と判断する
PR実施期間中に売上が増えたとしても、その増加分がすべてインフルエンサーの投稿によるものとは限りません。
検索広告、季節要因、キャンペーン、既存顧客の購入なども売上に影響します。
専用リンクなどで確認できる成果と、施策による可能性がある間接的な効果を分けて報告することが重要です。
効果測定は次回のクリエイター選定にも活用する
インフルエンサーマーケティングでは、実施した投稿の結果を次の施策に活かすことが重要です。
たとえば、同じ予算で複数人に依頼した場合、クリエイターごとの再生数、リーチ、保存数、サイト流入などを比較します。
このとき、事前の選定で確認した直近20投稿程度の再生数の中央値も記録しておくと役立ちます。中央値の求め方と使い方はインフルエンサーをフォロワー数で選んではいけない理由と、代わりに見るべき指標で解説しています。
実際のPR投稿が通常時の中央値と比べてどうだったのかを確認することで、そのクリエイターのPR投稿にどのような傾向があるのかを検証できます。
ただし、中央値を上回ったことだけで施策の成功を判断するのではなく、目的に合った成果指標も確認する必要があります。
初回の施策から完璧な効果測定を行う必要はありません。
まずは目的を一つ決め、計測できる数字をそろえて記録することから始めます。その結果を次回の予算配分やクリエイター選定に反映することで、施策の改善につなげられます。